核燃サイクル 転換に向け論議を深めよ
信濃毎日新聞 05月17日(木)
http://www.shinmai.co.jp/news/20120517/KT120516ETI090006000.html
原発の使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルの在り方について、内閣府の原子力委員会の小委員会が三つの選択肢を示し、それぞれの長所と短所をまとめた。
これをもとに、政府の「エネルギー・環境会議」が新たな政策の方向性を議論する。
福島第1原発事故を受け、核燃料サイクル路線も抜本的な見直しを迫られている。政府は従来の方針にこだわるのではなく、全面転換を視野に入れ、国民的な論議を深める必要がある。
核燃料サイクルは使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再利用するというもので、日本の原子力政策の基本となってきた。
だが、このサイクルを担う青森県六ケ所村の再処理工場で高レベル放射性廃液が漏れたり、廃液をガラスで固める工程にトラブルが続いたりして、本格操業が再三延期されてきた。
プルトニウムとウランの混合酸化物燃料を用い、消費した以上の燃料をつくり出すとされる高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」も、ナトリウム漏れの事故などにより、計画が大幅に遅れている。
巨額投資と長年の研究にもかかわらず、核燃料サイクルは行き詰まっているのが現状だ。そこに福島第1原発事故が起き、政府は「脱原発依存」へとかじを切った。核燃料サイクル路線が一段と難しくなったとみていいだろう。
今回の小委員会が示した政策評価は、(1)全量再利用(2)再利用と直接処分の併存(3)全量直接処分―の選択肢を掲げた。そのうえで0%~35%の4段階の原発依存度を想定し、コストや政策変更に伴う問題点などに即して、優劣を検証した点に特徴がある。
例えば、「全量直接処分」については、原発依存度がゼロになる場合は最有力とする一方、政策変更に伴う課題が最も多く、使用済み燃料が行き場を失う可能性があるなどと指摘している。
どの選択肢を見ても課題は山積している。日本の原発政策は、付けを将来に回し、目先の経済効率を追い求めてきたといえるだろう。福島第1原発の事故は、先へ先へと延ばしてきた問題を整理し、根本的に出直す機会を迫っているととらえる必要がある。
核燃料サイクルの見直しを含め、専門家や政治家だけの論議で新しいエネルギー政策の方向を決める状況ではない。
政府には、論議のたたき台やデータを詳細に開示し、広く国民の意見を聴く姿勢が求められる。
0 件のコメント:
コメントを投稿